My Dear 上司s(Bosses)

部下Zによる自慢の上司、不満の上司、妄想の上司を綴ったもの。

課長 vs 課長。部下は他課課長の動きを見ています #残念な上司

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他課の課長が自分の課の課長をコケにしていると分かった時、ものすごく嫌な気分になる。

これは、新製品の発売日を迎え、発売後1ヶ月の売れ行きや評判をまとめた資料作成を指示された時の話。

所属課管轄外のデータ入手のため、他課に依頼を行う

当時私が所属していたA課は、売上の数字をまとめる部署ではなかったので売上データは持っていなかった。

欧州出張中の部長から「新製品の発売後1ヶ月間の売上と評判の相関をまとめたパワーポイントを1枚作ってください」とメールで指示を受けた私は、毎朝行われている朝礼で課長にお伺いを立てた。

「A課長、売上のデータはどうしましょうか?うちにはありませんよね?」

「売上ならB課の管轄だから、B課課長に聞けばいいんじゃない?」

社歴の長い課員の1人が、そう答える。

「そうですね。部下Zさん、B課課長にお願いしてください」

A課長はその課員の言葉に頷いて、B課課長への依頼を私に指示した。

「はい、かしこまいりました。では、朝礼後B課課長に依頼メールを送ります」

「よろしくお願いします」

売上数値は機密性が高いとされる場合もあるけれど、A課長は私にデータの取り寄せを許可し、私は疑問なくその指示を受け入れた。そりゃ、部長指示の資料を作るためならば、「ダメ」とは言わないのが普通だろう。

朝礼が終わり、自席に戻った私は早速B課課長にメールを書く。

To:B課課長、部長
cc:A課長

B課課長、

お世話になります。A課の部下Zです。

資料作成のため、○月分の製品XXの売上データを必要としております。

売上データはB課管轄なので、B課課長にお伺いするようA課長より指示を受けました。

B課課長のご都合の良い時に、売上データについてご教示いただけますでしょうか。

ご多用のところ、恐れ入ります。どうぞよろしくお願いいたします。

A課 部下Z

B課課長は、「メールのレスポンスがとても速く、仕事も速くて人当たりの良いデキる課長」との評判を耳にしていたので、早ければ午前中から午後一、遅くても夕方までにはデータが送られてくるだろうと私は期待していた。

出張の多いB課課長だけれど、その週はずっとオフィスにいる予定になっていたし、事実、その日の朝もB課課長が自席にいる姿を見ていたから。

しかし…

デキる課長と言われるB課課長の、知らなかった一面をこの後見せつけられることになる。

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B課課長、依頼メールを既読スルー

データの依頼メールを送信し終わり、私はB課課長からデータファイルが送られてくるのを心待ちにしていた。

データが手に入るまでは、新製品の評判をまとめておけば良い。データが来たら、評判の数や内容と売上数・金額を突き合わせて相関関係を読み取り、グラフを入れて資料を完成させられる。

売上データにアクセスできるのは、何もB課課長だけではない。

各カテゴリ、各製品の売上数値はB課が一手にまとめているので、B課課長が各カテゴリ担当者に「A課の部下Zさんにこの期間のデータを送ってあげて」と指示を出すだけで事足りる。多忙を極めるB課課長自らが私にファイルを送信する必要は特にない。

B課課長は、島を1つ隔てた向こうでB課課員と楽しそうに談笑している。


新製品の評判を大方まとめ終わったのは18時頃だった。

メールボックスを確認するが、B課課長またはB課課員からの連絡はない。

あれ?

顔を上げて向こうの島を確認すると、B課課長はちょうど会議から戻ってきて自分の椅子に腰を下ろすところだった。

忙しかった…んだよね?

メールのレスポンスが早い人と言っても、すぐに必要なデータの入ったファイルが出てこないこともあるし、優先度の高い業務が発生した可能性もある。

明日出社したら、メールの返信とデータが来てるかな?

なんとなく腑に落ちないものを感じながら、翌朝にはきっとデータが揃うだろうと思って私は帰宅した。

翌朝。メールボックスに、B課課長やB課課員からのメールはなかった。

B課から売上データをもらえなければ、資料は完成しない。

資料のリクエストメールには、「我らがA課長の指示でお願いしている」と明記してある。つまり、ペーペーな私の独断と偏見ではなく、上長からの業務指示での依頼ということ。

「資料作成のため」ではなく、「部長から指示を受けた資料作成のため」と、部長を引っ張り出しておく必要もあっただろうか…

「部長」の一言があれば、B課課長の動きも早かっただろうか。

でも、メールの宛先には部長のアドレスも入っているので、部長絡みの資料作成であることはB課課長なら一目で理解しそうだけれど…

資料作成の締め切りまでにはまだ2日あるので、もう少し、今日の夕方ぐらいまで待ってみよう。

胸に広がるモヤモヤから敢えて目を逸らし、私は「きっとB課課長もお忙しくて…」と無理やり自分に言い聞かせた。

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我らが課長がコケにされた話は、女子ネットワークで拡散された

結局、売上データは2日目の退勤時刻になっても、3日目の朝一になっても送られてこなかった。

依頼メール送信から48時間が経過してアクションがなかった時点で、私の中では「B課課長が確信犯でデータを渡さないようにしている」と確定した。

A課長もB課課長も同じ課長職。課長が必要としている資料を、課員が管轄課に依頼するのは日常茶飯事。こちらだって、B課に資料を渡すことだってあるのに。

他の業務との兼ね合いもあるので、そろそろ本当に売上データを確実に入手しなければいけない。我がA課長と部長の両方にお伺いを立てるかと思った時、メール着信のポップアップが表示された。

部下Zさん、

売上データです。これで足りるはずだけど、もし足りなかったら言ってください。

部長

売上データのファイルが添付されたメールは、最後に泣きつく先として考えていた部長からだった。欧州から昨夜戻った部長は、今日の午前中を出張中に手を付けられなかった作業の処理にあてており、対応されないままの私のメールを発見して、慌ててデータを送信してくれたようだった。

部長~~~!!!神対応!

部長は気配りの人且つ、フットワークの軽い人なので、必要と判断したらさっと資料を送る人だ。

部長のフォローのおかげで、売上と評判の相関をまとめた資料はすぐに出来上がり、私はそれを待たせたお詫びと共に部長に送信した。

この資料は週末の経営会議で活躍したらしい。

そして。


「えー?!A課長からの依頼をB課課長が無視?!課長の指示でってメールに入っていて?A課長、コケにされてたの?」

「やだー。それ感じ悪い」

「B課課長って、そんな人だったの?」

「何それ。B課課長ってめちゃくちゃレスポンス早いのに、それってどう考えてもワザとじゃん。むかつくね」

「B課課長って、A課長のこと嫌いだったの?そんな風に見えなかったのに。課長からの依頼をスルーって…それはマズいよ」

「B課課長…小さいなぁ」

事の成り行きは、女子ネットワークを経由して海外支社やグループ会社にまで拡散された。

私自身はそれほど顔が広いタイプではなかったけれど、他部署、他フロア、他支社に顔の利く女性社員は数え切れないほどいるし、業務用のチャットアプリは、仕事の相談、昼食の相談、異動する社員の情報交換、日々の出来事のシェアに大活躍している。

B課課長がA課長をコケにした。そのせいで業務に支障が出た。

1週間後には、B課の女性課員の耳にも話が伝わり、B課課長は良い上司だと思っていた彼女は、自分の上司に小さな不信感を持つようになってしまったと、女子ネットワーク経由で聞いた。

まさか自分の上長がウラでそんなことをしているとは、よほどの悪評持ちでない限り想像すらしないだろう。

暴露したことによって上司への信頼を欠けさせてしまったことは少し申し訳ない気持ちもしつつ…

裏の顔は早めに分かっておいた方が、きっといつか自分を守ることになると思う。

気に入らない役職をコケにする時は、部下を巻き込むな

同じ会社に勤め、デスクを並べて仕事をしていても、相性が合わない人間は必ずいる。

B課課長がA課長をコケにした理由は知らないし、興味はない。

ただ、同じ立場の役職同士で相手を軽んじたり嫌がらせをするのならば、対象は当人だけにした方がいい。

データを渡さないとか、出し抜くとか、悪評を撒き散らすとか。

嫌がらせをしたいなら好きにして良いけれど、コケにしたい相手が部下から慕われている場合、部下を巻き込んで嫌がらせをするのは賢いとは言えない。

喫煙所が閉鎖されようと、飲みニケーションが激減しようと、女子トイレや給湯室に張り巡らされた女子ネットワークだけは、消滅しない。

残念な上司がやらかした残念な出来事は、デキる上司が見せる素敵な神対応の何万倍も速く伝達するのだから。